2016年5月15日日曜日

『吟醸掌篇 vol.1』(けいこう舎):志賀泉、柄澤昌幸、小沢真理子、山脇千史、広瀬心二郎、栗林佐知、他

吟醸掌篇 vol.1吟醸掌篇 vol.1
志賀 泉 山脇 千史 柄澤 昌幸 小沢 真理子 広瀬 心二郎 栗林 佐知 江川 盾雄 空知 たゆたさ たまご猫

けいこう舎 2016-05-09
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【概要】
書名:吟醸掌篇 vol.1
著者:志賀泉、柄澤昌幸、小沢真理子、山脇千史、広瀬心二郎、栗林佐知、他
出版社:けいこう舎
頁数:104

【感想】
今回は、文芸誌『吟醸掌篇 vol.1』の感想です(というより、せんで…ゲフンゲフン)。

出版元のけいこう舎は、小説現代新人賞や太宰治賞を受賞したこともある小説家の栗林佐知さんが事実上お一人で始められた編集工房で、『吟醸掌篇 vol.1』は、そのけいこう舎の最初の出版物とのことです。

一人で文芸誌を作るなんて、気の遠くなるような労力が必要でしょう。執筆者の人選や発注、原稿の校閲だけでなく、全体の構成や装丁なども考えなければなりません。もし、自分が一人で文芸誌を作ることになったらなどと想像すると、それだけで卒倒しそうです。

それでも、そんな労力をかけて『吟醸掌篇 vol.1』は作られました。その理由はけいこう舎のサイトに優しい調子で書かれていますが、実際には、非常に強い思いがあったのだろうと推察します。

『吟醸掌篇 vol.1』には、新人賞などを受賞して小説家デビューを果たしても、中々発表の機会に恵まれない小説家さん達の短篇小説が主に所収されています。これらの短篇小説は、意外にも(といったら無礼千万ですが)、滋味あふれる素晴らしい作品ばかりです。なぜこんなに素晴らしいものをお書きになれるのに、発表の機会が得られないのかと不思議でなりません。

その理由を考えますと、失礼な話ですが、やはり地味だということになるでしょうか。人を驚かす奇想や、血沸き肉躍るような冒険、思わず唸る謎解きなどとは無縁です。従来の小説の方法論を覆そうといった野心にも乏しいのかもしれません。それでも、私は『吟醸掌篇 vol.1』に所収された小説は素晴らしいものばかりだと思います。

もちろん、小説の読み方は千差万別ですから、誰にとっても素晴らしいとは言いません。ですが、少なくとも一部の読者には忘れ難い印象を残すはずです。

例えば、小説の登場人物が自分とは異なる境遇でありながら、その小説がまるで自分について語られていると思うことがありませんか。このような感想は、いささか素朴ではありますが、それを完全に否定するのは、ナボコフのようなインテリの悪い癖です。本書の短篇小説は、このような感想を否定しません。

遠藤周作は、『キリストの誕生』の中でこのように言っています。

「人間がもし現代人のように、孤独を弄ばず、孤独を楽しむ演技をしなければ、正直、率直におのれの内面と向きあうならば、その心は必ず、ある存在を求めているのだ。愛に絶望した人間は愛を裏切らぬ存在を求め、自分の悲しみを理解してくれることに望みを失った者は、真の理解者を心の何処かで探しているのだ。それは感傷でも甘えでもなく、他者にたいする人間の条件なのである(遠藤周作『キリストの誕生』(新潮文庫:286頁))」

『吟醸掌篇 vol.1』は、この言葉に深い共感を持って頷く人のための本です。徐々に住みづらくなっていくこの社会において、それでも他人と関わりもって、できれば理解したいと思う人のための文芸誌です。

実をいうと、私も栗林佐知さんにお声をかけて頂き、コラムという名の駄文を寄稿する僥倖に恵まれました。非常に光栄なことです。

え、じゃあ、これは宣伝なのかと思われたかもしれません。そう、せん…げふんげふん。いや、まあ、そんなのはどちらでもいいではありませんか。上に書いたことは、(説得力はないかもしれませんが)嘘ではありません。私のコラムは、まあ、破って紙飛行機にして飛ばしてください。よく飛ぶように念じておきましたので、きっと月にさえに届くはずです。

とまあ、そんな冗談はともかく、発行部数は少ないようですので、気になる方は躊躇せずにAmazonに注文しましょう。品切れになったら、手に入れるのは大変ですよ。




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